B♭クラリネット・E♭クラリネットに使用されるタンポ(パッド)には、いくつかの種類があります。
タンポの種類によって音色や耐久性が変わってくるので、タンポ交換を依頼する際にはご自身に合った材質の物を選びましょう。
このページでは3種類のタンポについて解説します。
タンポの構造
まず材質云々の前にタンポがどう構成されているか知っておきましょう。
クラリネットのタンポは、厚紙・フェルトを重ねて、それを皮で包んで作られています。
クラリネットのタンポは4種類
クラリネットのタンポはメーカーや機種、部位によって4種類のタンポを使い分けています。
- スキンタンポ(ブラダータンポ)
- レザータンポ(革タンポ)
- ゴアテックスタンポ
- コルクタンポ
素材によって耐久性が変わりますし、同じ楽器でもタンポの種類を変えるだけで音色が変わるので音も考慮して決めると良いでしょう。
スキンタンポ(ブラダータンポ)
最もポピュラーなタンポ。
スキンは別名「ブラダー」とも呼ばれます。B♭クラ・E♭クラに使われています。
ブラダーは厚さ0.02mmの薄い素材。
ベートーヴェンが活躍していた時代は魚の浮袋が用いられていましたが、現在は牛や豚などの腸の皮を原料としています。ウインナーの皮と似たようなものです。
牛や豚を使うようになった今でも「フィッシュスキン」と呼ばれています。
薄い素材なので馴染みが良く、トーンホールをぴったり塞いでくれるのがメリットですが、水分で変化しやすいことと耐久性が弱いことがデメリット。
クセのない音色と、軽めの吹奏感が特徴です。
レザータンポ(革タンポ)
サックスやバスクラといった大型楽器に使用されている厚手の革(レザー)を使用したタンポ。モデルによってはB♭・E♭クラリネットにも使用されます。
スキンタンポに比べると圧倒的に厚手なので、耐久性が爆上がりします。
B♭・E♭クラリネットにおいては主に高級機種に使用されます。
元々スキンタンポが入っていた楽器でも、レザータンポに入れ替えることもできます(物にもよるので交換可能かどうかリペアマンに確認しましょう)
スキンタンポよりもパーツ代が高いので、レザータンポを指定すると修理代もやや高くなります。
輪郭のはっきりした力強い音色になりやすく、やや抵抗のある吹奏感が特徴です。
ゴアテックスタンポ
ゴアテックスとは、ウィンドブレーカーなどに使用される防水作用のある合成素材。
レザータンポと並んで耐久性が高く、レザータンポよりも薄いのでトーンホールによくなじんで密閉してくれるとことがメリットです。
主に高級機種で採用されています。
スキンタンポよりもパーツ代が高いため、修理を依頼する際にゴアテックスタンポを指定すると修理代も高くなります。
コルクタンポ
B♭・E♭クラリネットのレジスターキイ(左親指のキイ)にのみ使われます。
機種によっては他のキイと同じようにスキンタンポ等が使われていることもあります。
フェルト入りの白いタンポと比べると、コルクタンポの方か軽快な吹き心地になります。
クラリネットではレジスターキイにのみ使われるコルクタンポですが、オーボエやピッコロでは楽器全体にコルクタンポが用いられている機種もあります。
部分的に種類を変えることもある
クラリネットのタンポには傷みやすい場所と長持ちする場所があります。
傷みやすいのは上管の小さいクローズキイ。上管のトリルキイやC#/G#キイなどです。
水分の通り道にあるクローズキイは、どんなにお手入れしていても寿命が短くなってしまいます・・・
音色の統一感や鳴りムラを減らすため、楽器全体でタンポの種類を統一するのが基本ですが、あまりにも特定の箇所ばかり頻繁に交換が必要になる場合は傷みやすい箇所だけ部分的にレザータンポを使うという選択肢もあります。
楽器に合うパーツが用意できない等、タンポの種類を変えられない場合もあるので、違う種類のタンポを入れてみたい方はリペアマンに相談してください。
タンポが茶色に変色してしまう件
クラリネットのタンポは音孔に沿って茶色く変色します。
これは管の材料であるグラナディラの色素が溶け出していることが原因です。
木材の色素が移ってしまうのは仕方がないことで、変色しただけならば交換する必要はありません。
- タンポの皮が破れている
- タンポがカチカチで弾力が無い
- 轍(音孔の跡)が深く食いこんでタンポの中央が張り出している
上記のようなサインがあれば交換の目安です。そろそろ交換しましょう!