シルバーのリガチャーが黒く変色して悲しい思いをしたことはありませんか?
銀メッキのキイが黒く変色して悲しい思いをしたことはありませんか?
その銀の変色、原因は「マウスピース」です。
マウスピースに含まれる硫黄が銀と化学反応を起こして硫化銀という黒い皮膜を作ってしまったことが原因です。
でも、安心してください!
銀の黒ずみは1分足らずで元の銀色に戻せます。
100円程度でできる方法なので、黒ずみが気になっている方はお試しください。
(金管のマウスピースでもできますので、金管の方もぜひ!)
記事の前半は、木管マウスピースの材料と変色の原因についての解説です。
還元反応の方法を早く知りたい方は目次からジャンプしてください。
銀が黒くなる原因/硫化銀とは?
- 銀メッキのリガチャー
- 総銀製のフルート
- キイ銀メッキのクラリネット
- 銀メッキ仕上げのサックスやトランペット など
銀製品(銀メッキ含む)は時間とともに段々と黄ばみ、さらに時間が経つと黒く変色します。
黒ずみの犯人は「硫黄」
この黒ずみの原因は「硫黄」です。
硫黄と言えば温泉をイメージする方が多いと思いますが、空気中にも硫黄が含まれています。
銀の黒ずみは、サビではありません。
空気中の硫化水素(硫黄)と銀が結合して「硫化銀」になることで表面(空気に触れる部分)に黒い皮膜を形成するため、ブラックニッケルのように真っ黒になります。
リガチャーが黒くなる原因は「マウスピース」
ひどい有様ですね。笑
これは銀メッキのリガチャーです。ブラックニッケル仕上げではありません!
ちなみにこの真っ黒リガチャーは、この写真を撮るために半年間わざと変色する環境に置いたものです。半年でこんなに黒くなります。
このリガチャーはどうしてここまで黒くなってしまったのか?
それはマウスピースの材料であるエボナイトに原因があります。
エボナイトとは?
生ゴムに30-40%の硫黄を加えて硬化させた天然樹脂の一種。
強度が非常に高く、硬くて丈夫な素材。
外観が木材の黒檀(エボニー)に似ていることから”エボナイト”という名前が付きました。
楽器用マウスピースの他には、万年筆やボーリングの球に使用されています。
マウスピースの主原料であるエボナイトには多量の硫黄が含まれているため、マウスピースにリガチャーを付けたまま保管すると硫化銀になってしまうというわけです。
銀製あるいは銀メッキの楽器ケースに、硫黄が含まれるヘアゴムや絆創膏を一緒に入れると同じ原因で変色します。気を付けましょう。
「黒いマウスピース」エボナイトとフェノールの違いとは
- エボナイト(別名ハードラバー)
- フェノール樹脂(別名ベークライト)
エボナイトもフェノールも見た目は真っ黒で似ていますが、原料と音の特徴が違います。
エボナイト
フェノールよりもエボナイトの方が、多くの製品に使われています。
クラリネット・サックスともにバンドレンのマウスピースは全てエボナイト製です(メタルを除く)
セルマーは「ハードラバー」と表記していますが、これはエボナイトの別名です。
セルマーはほとんどがエボナイト製ですが、最近ではエボナイトに代わる素材の「サーモプラスティックポリマー」という樹脂が一部の製品に採用されています。
フェノール
ヤマハのエントリーモデルに採用されています。
(カスタムモデルにはエボナイトを採用しています)
フェノールとホルムアルデヒドを原料とした、人工的に合成されたプラスチックです。
エボナイトと同様に、非常に硬い素材です。
そして、エボナイトよりも軽いです。
フェノール樹脂は別名ベークライトとも言います。
「ベークライト」は商標名ですが、フェノール樹脂を指す代名詞になっています。
変色を防ぐには?
エボナイト製のマウスピースを楽器ケースに入れて保管すると、銀メッキ仕上げのキイや管体も黒く変色します。
銀製のリガチャーや楽器本体を変色させたくない方は、以下の点に気を付けましょう。
- エボナイト製のマウスピースを楽器ケースに入れない
(ケースカバーのポケットに入れるなど工夫しましょう) - 楽器ケースに入れる場合はクロスで包む
- ケースにC-Guardを入れる
C-Guard(シーガード)とは、硫化による変色を防止する成分が含まれたクロスです。
ケースに入れるだけで効果を発揮するので、銀製・銀メッキの楽器の黄ばみ・黒ずみを防止したい方におすすめです。
楽器のサイズに合わせて様々なサイズのCガードが発売されているので、気になる方は探してみてください。
大きめを買って、好きな大きさに切って使うのもアリです。
私は総銀製フルートのケースに入れていますが、かなり効果あります!
還元反応/重曹とアルミホイルを使う方法
還元反応を利用して、「硫化銀」を銀と硫化水素に分離させます。
還元反応とは、結合した物質を化学反応によって分離させることです。
硫化銀にいる硫黄に対して銀よりも結合しやすい物質を与えて、そっちに乗り換えてもらうことで銀と硫黄を引き離す、という作戦です。
それでは、やってみましょう!
準備するもの
- 変色した銀製品
- アルミホイルまたはアルミ皿
- 耐熱の容器(金属製はNG)
- 重曹または塩
- 熱湯(80℃くらいで大丈夫)
- シルバークロスあるいはシルバーポリッシュ
アルミ皿はバーベキューで焼肉のタレを入れるあのお皿のことです。
使うのであれば、お湯を注ぐので深めのお皿が良いです。
耐熱容器について、今回は加熱OKのガラス容器を使いました。
マグカップでもグラタン皿でも、熱湯に耐えられれば何でもいいです。
手順
耐熱容器に敷いても良いですし、丸めたアルミホイルを容器に入れても良いです。
とにかく容器の中にアルミが入っていれば大丈夫。
重曹(塩)の役割は「電子の働きを活発にして還元反応を手助けすること」です。
熱湯もただのお助けマンなので、重曹と熱湯の分量はテキトーでOK。
銀製品の全体が浸る量の熱湯を注いでください。
今回はコップ1杯(200cc)の熱湯に対して、大さじ1杯程度の重曹でやっています。
沸かしたての熱湯でなくても、80℃程度のお湯で大丈夫です。
熱湯を注ぐと、すぐに気泡が発生します。
この気体は硫化水素です(有害)
リガチャー1個程度では人体への影響はわずかですが、一応換気しましょう 。
この気泡が落ち着く頃には、黒ずみはだいぶ軽減されます。
今回のケースでは45秒くらいで気泡が収まり、黒ずみが改善されました。
気泡がおさまっても、お湯はまだ熱いです!冷めるまで放っておきましょう。
急ぐ時は水を足して温度を下げたり、箸で拾ったり…とにかく火傷しないようにお気をつけください。
還元反応を利用しても多少の黄ばみは残ります。
水気を拭き取ったら、残りの変色をシルバークロスで磨きましょう。
普通のクロスにシルバーポリッシュをつけても、もちろん大丈夫です。
これくらいの黄ばみならサッと撫でる程度でキレイになります。
下記は、お湯から引き揚げた直後と、銀磨きクロスで拭いた後の比較写真。
シルバークロスで磨いた後は、何も付いていないクロスで乾拭きして完了です。
最後に乾拭きしないと残った研磨剤で手が汚れます!
はじめからポリッシュを使わない理由
真っ黒に変色した状態からでも、ポリッシュでゴシゴシ磨けば銀色になります。
しかし、「磨く=削る」です。
削った金属は元に戻せません。
なので、まずはなるべくパーツを削らないでゴールにたどり着く方法を選ぶのが楽器にとって最善かと思います。
そういう理由で「還元反応で変色を軽減する⇒クロスで軽く拭く」という二段階の作業を紹介しました。
銀製のフルートや銀メッキ仕上げの楽器本体は分解しないとこの方法は使えませんが…
クラリネットやサックスのリガチャーやキャップ、金管のマウスピースなどの小物類であれば誰でもできます!
変色が気になっている方は是非お試しください。